心の清涼剤

胸の辺りがスーッとする読後感

見覚えのない空

しろくもがフランスパンみたいにモクモクとながびている

そのうえにはあおそら整然せいぜんならんでいる

滑走路かっそうろったばかりの飛行機ひこうきのクウーというおもおとひび

ここではあめらない

それだけで十分じゅうぶんじゃないか

 

ポケットにれてその光景こうけいながめているとうしろのほうからこえをかけられる

さけぶようなこえおれ名前なまえんでいる

だれんでいるのかはからない

友達ともだちなんて一人ひとりもいないはず

集合しゅうごうかったみたいだ

 

指定してい場所ばしょくともう大方おおかた人数にんずうあつまっている

長机ながづくえ椅子いすがいくつもならんでいてまるで学校がっこうみたいだとおも

実際じっさいにそんなかんじでまわりのひとおなじぐらいの年齢ねんれい男女比だんじょひはない

おれ適当てきとういているせきにつく

 

となりには眼鏡めがねけた女子じょしすわっていてほんんでいる

おれなんほんんでいるのか確認かくにんしようとこっそりと表紙ひょうしのぞもうとする

するとその女子じょしはそれに気付きづいてこっちをいて眼鏡越めがねごしに

それは非難ひなんしているような視線しせんからおれ存在そんざい確認かくにんしたようなきにわる

どこかでったことがあるのかもしれない

 

その女子じょしなにわずにまた視線しせんほんもど

わるかんじはしていないしなにかの手応てごたえすらある

さっきおれ名前なまえんだのはもしかしたら彼女かのじょなのかもしれない

そうかんがえると何故なぜすこ興奮こうふんしてくる

 

ポケットからタバコを

一本いっぽんくわえてをつけようとする

ライターがつからない

ポケットのなかんでさがしてみるけどつからない

ふと気付きづくとさっきのとなり女子じょしがこっちをていて確実かくじつ非難ひなん眼差まなざしをける

たりまえ反応はんのうだとおも

場違ばちがいなイカれた行動こうどうをしているのはおれほう

それでもおれ興奮こうふんおさまらない

いちばちかとおもって「もしかしてライターってない?」とその女子じょしはなしかけてみる

 

室内しつないがシーンとなる

みんなの視線しせん一気いっきおれあつまった

その女子じょしおれにらつづけている

おれ以外いがいひとつになる

もしその状況じょうきょう写真しゃしんったならセピアで時間じかんまったようなかん

さっきまでの興奮こうふんとは反対はんたいおれはゾッとして体温たいおんがる

 

だれかが自分じぶん名前なまえんでいる

おれはそれに反応はんのうして

彼女かのじょ眼鏡めがねけていただろうか

「ねえ、さっき」とおれいかける

おれ彼女かのじょ名前なまえらない

 

彼女かのじょけていた眼鏡めがねはずしておれ微笑ほほえ

そしてした右手みぎて指先ゆびさきにはライターがにぎられている

あか透明とうめいのライターでどこにでもある安物やすものそうな

彼女かのじょこえはっする

「これがほしかったんでしょ」

しばらくつめ沈黙ちんもく

おれはそのされたものを

かすかにのこはだのぬくもり

あたたかさ

 

おれはそのライターでタバコにをつける

いきふかんで天井てんじょう見上みあげながらけむりくもつくろうとする

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