心の清涼剤

胸の辺りがスーッとする読後感

最後に見る夢

なみおとこえる

波打なみうちぎわすなさらうサラサラというおとこえる

まだ朝方あさがたはや時間じかんなのかブラインドかられるひかりよわ

見上みあげた天井てんじょうにはファンがおとてずにクルクルとまわっている

 

しばらくなみおとみみます

自分じぶん呼吸こきゅうわせてむね拍動はくどうする

めたという実感じっかんともにまだきているという安堵感あんどかん芽生めばえる

ベッドのとなりていたはずのつまはいない

もうきて朝食ちょうしょく準備じゅんびでもしているのかもしれない

 

むすめことかんがえる

昨日きのう一緒いっしょにいた青年せいねんとはどういう関係かんけいなのだろう

タメいきをつきそうになるのをこらえる

もうわたしのこされた時間じかんすくない

これからこることにおもわずらっている余裕よゆうはない

このうつるものをそのままめるしかないじゃないか

むすめわらっていた、その笑顔えがおしんじてあげよう

 

ねむっているあいだゆめ

いまでは退しりぞいた職場しょくばでの光景こうけい

ともはたらいた仲間なかまたちのかお

職場しょくばったものもいればあらたにむかれたものもいる

その関係性かんけいせいなか気付きづけばわたし一番いちばん古株ふるかぶになっていた

退職たいしょく理由りゆうはハッキリとはげていない

ここらへん潮時しおどきなんだとなか冗談じょうだんめいたこと以外いがい

 

わたしはそこで外科医げかいとしてはたらいていた

これまでに数々かずかず凄惨せいさん現場げんば目撃もくげき経験けいけんしてきた

あまりの不条理ふじょうりさにかみという存在そんざい猜疑さいぎけたこともある

ひとについて卓見たっけんてきたというつもりはない

むしろひとよう不可解ふかかいさをきつけられるばかりだった

 

最後さいご勤務きんむおぼえている

一人ひとり少女しょうじょ父親ちちおやともにやってきた

かるれときず程度ていど怪我けがだったがわたし懇切丁寧こんせつていねい処置しょちをした

初心しょしんかえるという新鮮しんせん気持きもちで

結局けっきょくその少女しょうじょわたし最後さいご患者かんじゃになった

いまになってそれをほこらしくおも

 

なみおとつづ

心地ここちよいリズムで

まるで静寂せいじゃくふかうみなかへとさそうように

死神しにがみわたしところにもやってきた

もうとっくに覚悟かくごはできている

覚悟かくごというよりはれるということ

かわいたすなみずむように

無心むしんたような感情かんじょう

 

リズムなんだ

 

人生じんせいとは

 

なみおとがそうげている

 

寝返ねがえりを

そのひとつの動作どうさすらわたしには大変たいへん労力ろうりょくがかかる

かるいきいて呼吸こきゅうととのえる

 

最後さいごときおも

あの少女しょうじょ姿すがたわたしむすめ姿すがたかさなる

水平線すいへいせん彼方かなたそらうみ浸透しんとうする

またすこしの眠気ねむけかんじている

 

じる

ささやかなひかりまぶたうらあつかんじさせる

わたし中身なかみはすっぽりとまれるようになみおと同化どうかしていく

うすれていく意識いしきなかわたしからだがらのようにからっぽになる

それから最後さいごなつかしいゆめつづきがはじまる

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