車のエンジンをかけるとCDが流れる
それに合わせて歌う
下手くそすぎてやりきれない
友達はイイねと言ってボリュームを上げる
二人で大声で歌う
もうこれしか残されていない感じ
ロックバンドのボーカルに合わせるように歌う
音程の幅が広すぎてついていけない
高音では声がかすれて低音では声がこもる
生まれつき才能が違う
ギャップがヒドイ
ことごとく生まれた星を間違えたと思う
車の窓から覗く空は暗闇に包まれる
帰り道は寂しいばかりだ
明日は月曜日で今は日曜日の夜
確実に何かが終わる感じ
巻き戻せない週末
赤信号で止まる
ロックバンドのボーカルは人生を色で例える
いろんな色があっていいんだと
あまりにも軽い歌詞
運転している友達にこの歌詞に共感するかと聞いてみる
友達は一瞬考えてしないと答える
そりゃそうだ
今の俺たちじゃ無理だ
人生を信じていない
すくなくとも俺はそう
友達はさっきの質問の後でもこの歌を口ずさむ
内省的なものには一切興味が無いらしい
信号が赤から青に変わる
この先の交差点で右折すれば遠回りだけど直進だともう帰るしかない
俺はそれに賭けてみようと思う
ゲーム感覚で
右折か直進か
右折すれば天国、直進すれば地獄という風に
俺に未来は無い
この道を逸れるしか行きようがない
友達は大丈夫だろう
まだ
あと何秒後かに分かるさ
その結果で俺の気分は上下する
いっそ開き直ろう
車の中では音楽が鳴り続けている
友達は疑いもなくその歌を口ずさむ
ロックバンドのボーカルはそのありあまる才能で人生を称賛し続けている
note.mu